ワインに興味のある方であれば、ワインを料理にも活かしたいと考えるのは当然です。ワイン料理に挑戦したくても、ワインの選び方がわからないと悩む方もいます。本記事では、ワインを使った料理やワインを料理に取り入れるメリット・デメリット、選び方などを解説します。

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- 仕事以外でも年間100本のワインを飲む愛好家
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- 男女それぞれの視点からもワインをレビュー



ワインのプロが、初心者の方にもわかりやすく解説します。
記事を読めば、ワイン料理への不安が解消され、日常の食卓をより豊かにすることが可能です。ワイン料理には、赤ワインか白ワインを使用します。料理によって適したワインが異なるため、それぞれの特徴を理解してうまく活かせるようになりましょう。
ワインを使用する料理


ワインは、料理に深みと豊かな風味を加える調味料です。赤ワインと白ワインを使用する料理をそれぞれ紹介します。
赤ワインを使った料理
赤ワインを使った料理は、豊かな風味と深みのある味わいを楽しめます。家庭でも手軽に作れるレシピが多く、普段の食卓を華やかにするのに最適です。代表的な料理は以下のとおりです。
- ビーフシチュー
- ボルシチ
- コックオーヴァン
- ビーフブルギニョン
- ワインリゾット
赤ワインは調理過程で香りと風味を料理に移し、全体に深みのある味わいを与えます。牛肉との相性が良く、牛肉の赤ワイン煮込みは家庭でも人気の高い料理です。赤ワインを使ったソースやマリネは、料理の幅を広げるのに役立ちます。赤ワインソースは肉料理にぴったりです。
赤ワインビネガーを使ったマリネは、前菜やサラダに適しています。赤ワインはデザートにも活用が可能です。
» ワインと肉料理のペアリングの基本から応用までを紹介!
白ワインを使った料理
白ワインは淡白な食材と相性が良く、さっぱりとした味わいが特徴です。白ワインを加えることで、香りが豊かになり、風味が引き立ちます。代表的な料理は以下のとおりです。
- 魚介類のソテーやムニエル
- シーフードパスタ
- クリームソース系の料理
- 肉や豚肉の蒸し煮
- リゾット
白ワインの酸味や香りが食材の味を引き立て、おいしく仕上がります。デザートにも白ワインを活用できます。白ワインゼリーやフルーツのコンポートは、大人向けのスイーツとしておすすめです。白ワインの香りと風味がスイーツに上品さを加えます。
» 赤ワインと白ワインの違いを知っておいしく楽しもう!
ワインを料理に取り入れるメリット


ワインを料理に取り入れるメリットを2つ解説します。
- 料理の味が豊かになる
- 健康効果が得られる
料理の味が豊かになる
アルコールは食材の香りを際立たせ、糖分がコクを加え、香りを豊かにします。赤ワインに含まれるポリフェノールは肉の繊維をほぐし、柔らかく仕上げる煮込み料理に最適です。白ワインの酸味は、魚介類の生臭さを抑えます。ワインの香りは食欲を刺激し、食事をよりおいしく感じさせます。
健康効果が得られる
ワインに含まれる抗酸化物質は、老化防止に効果的です。他にも以下の効果があります。
- 血圧を下げる
- 骨密度を高める
- 認知機能の低下を抑える
- 免疫力を高める
ワインを料理に使うと、健康効果を日常の食事に取り入れられます。過剰摂取は健康に悪影響をおよぼすため、適量を守りましょう。
ワインを料理に取り入れるデメリット


ワインを料理に取り入れる際のデメリットは以下のとおりです。
- アルコールが残る
- 味の調整が難しくなる
アルコールが残る
料理にアルコールを使うと、調理後もアルコールが残ります。アルコールの残存量は、調理時間や温度によって異なります。煮込み時間が短いと多く残り、子どもや妊婦、アルコールに敏感な方には配慮が必要です。薬とアルコールが相互作用を起こす恐れもあるため、アルコールアレルギーの方は代替調味料を活用しましょう。



実は、通常の調理レベルではアルコールを完全に飛ばすことはできないんです。
アルコールは約78℃で蒸発し始めますが、ワインなどのアルコールは料理の中で他の食材や水分と混ざっているため、短時間の加熱ではかなりの量が残ってしまいます。
たとえば…
- アルコールを加えてすぐ加熱を止めた場合 → 約85%が残る
- 15分間煮込んだ場合でも → 約40%が残る
- 2時間以上煮込んでようやく → 5%以下になる
というデータもあります。(出典:アメリカ農務省)



フランベなどはアルコールが多く残る調理法です。
加熱すれば、いつかはアルコールがゼロになるのか?と疑問に思うでしょう。理論上は「アルコールはすべて蒸発する(ゼロになる)」ことは可能です。しかし、現実の調理では「完全にゼロ」は保証できない、というのが正確な答えです。
均等に加熱されず、わずかにアルコールが残っている可能性もあります。検査機器で「ゼロ」とされても、実際には0.01%未満など微量のアルコールが残っている場合もあるからです。
法的・科学的には「完全ゼロ」と表現できないため、「5%未満」や「ほとんど残らない」と言い換えるのが正確です。
» 楽しみ方が変わる!ワインのアルコール度数が決まるポイントと味わい方
味の調整が難しくなる
ワインを料理に使う際、味の調整が難しくなります。ワインの風味が料理全体のバランスに影響を与えるのが理由です。ワインの酸味や渋みが強すぎると、料理の味が崩れます。使用量を間違えると料理が台無しになるため、調整が必要です。ワインの種類によって風味が異なるので、料理に合ったものを選びましょう。
材料や他の調味料との相性を考慮し、加熱時間による風味の変化も見極める必要があります。ワインを使った料理は味の調整が難しいものの、適切に使えば深みと豊かな風味を加えられる調味料です。



難しく考えず、まずは少量から試してみるのがコツです。
料理に合うワインの選び方


ワインと料理の相性を考えると、食事をより楽しく豊かにできます。赤ワインと白ワインのそれぞれに合う料理を紹介します。
赤ワインに合う料理
赤ワインは、濃厚で複雑な味わいの料理と相性が抜群です。赤身肉を使った料理がよく合います。赤ワインに合う料理は、以下のとおりです。
- ステーキ
- ローストビーフ
- ビーフシチュー
- カレー
- トマトベースのパスタ
- マッシュルームのグリル
- チーズフォンデュ
肉料理に赤ワインを加えると、うまみが引き立ちます。トマトベースの料理では、赤ワインの酸味がトマトとバランスを取り、全体の味を引き締めます。
白ワインに合う料理
白ワインは、さまざまな料理と相性が良いです。魚介類や鶏肉、豚肉の薄切りなどの淡白な肉料理とよく合います。白ワインに合う料理は、以下のとおりです。
- サラダやチーズ
- 白身魚のムニエル
- エビのガーリックソテー
- カキのグラタン
- 鶏肉のクリーム煮
- 豚肉の薄切りソテー
フルーツを使ったデザートは白ワインとの相性が良く、爽やかな組み合わせを楽しめます。
ワインを料理に活かす方法


ワイン料理は、家庭料理を豊かにします。料理に活かす方法は以下のとおりです。
- ワインの風味を活かす煮込み方
- ワインの酸味を活かしたおいしいマリネの作り方
活用方法を身に付けて、食事を楽しみましょう。
ワインの風味を活かす煮込み方
ワインの風味を活かす煮込み方は、料理をおいしく仕上げるために重要です。適切な方法を取り入れると、ワインの香りと味わいを最大限に引き出せます。煮込む際のポイントは、以下のとおりです。
- 適量のワインを使う
- 肉や野菜を事前に焼く
- ワインを煮詰める
- ハーブやスパイスを加える
- 煮込み途中にワインを追加する
赤ワインを使ったビーフシチューでは、肉を焼いてから煮込むことでうまみが増し、ワインの香りとコクが調和します。煮込み具材に合わせてワインの種類を選ぶことも重要です。赤身肉には赤ワイン、魚介類には白ワインが適しています。煮込み後は味を確認し、塩やスパイスで必要な調整を行いましょう。
低温でじっくり煮込むと、ワインの風味が具材に染み込み、味わいが引き立ちます。赤ワインの豊かな風味が感じられるビーフシチューは、初心者でも簡単につくれるワイン料理にぴったりです。
ワインの酸味を活かしたおいしいマリネの作り方
ワインの酸味を活かしたマリネを作るには、材料選びと調理法が重要です。辛口の白ワインを選ぶと、爽やかな酸味が食材の味を引き立てます。作り方の手順は、以下のとおりです。
- ワインと油は1:2〜1:3の割合で混ぜる
- ハーブやニンニク、コショウなどの香辛料を加える
- 酸味が強すぎる場合は、砂糖や蜂蜜を少量加える
材料に合わせてマリネ時間の調整が必要です。魚や薄切り肉は短時間で十分ですが、味を染み込ませたい場合は数時間置きましょう。マリネ後は余分な液を切り、新鮮なハーブを添えると香りや見た目が引き立ちます。保存時は冷蔵庫で保管し、食べる直前に室温に戻しましょう。
ワイン以外で料理の風味を出す方法


ワインを使わなくても、料理の風味を出す方法を2つ紹介します。
- ワインの代わりに使える調味料
- アルコールフリーで楽しむワイン風味の料理法
ワインの代わりに使える調味料
ワインの代わりに使える調味料は多くあります。ワインの代替調味料は、以下のとおりです。
- 酢
- ブドウジュース
- レモン汁
- ポン酢
- トマトジュース
- だし汁
子どもや妊娠中の方は、アルコールを避けた調理がおすすめです。代替調味料を活用すると、ワインを使わなくても満足のいく料理を作れます。
アルコールフリーで楽しむワイン風味の料理法
アルコールフリーでも、工夫次第でワイン風味の料理を楽しめます。ワインビネガーは、ワイン特有の酸味や風味を再現するのに便利です。少量ずつ加え、好みに合わせて調整しましょう。赤ワインの代わりには濃い色のぶどうジュース、白ワインの代わりには白ぶどうジュースがおすすめです。
甘味が強い場合は調整すると、本格的な味わいが得られます。タイムやローズマリーなどのハーブを使えば、白ワインの香りや風味の演出が可能です。赤ワイン風ならローリエやクローブが効果的です。



甘味が強ければ、レモン汁やビネガーで調整していきます。
季節に合うワイン料理


ワイン料理は季節の食材や気候に合わせると、魅力が引き立ちます。それぞれの季節に合うワイン料理を紹介します。
春
春は、新鮮な野菜やハーブが旬を迎える季節です。白ワインやロゼワインを使った軽やかな料理が適しています。白ワインの酸味を活かしたホワイトアスパラガスのソースは、春野菜の甘みを引き立て、上品な味わいを楽しめます。
ロゼワインとオリーブオイル、レモンを合わせたサラダドレッシングは、春の新鮮な葉物野菜にぴったりです。軽めの調理法や盛り付けで、季節のフレッシュさを最大限に活かしましょう。
夏
暑い夏には、冷たい料理やさっぱりとした味わいの料理が好まれます。スパークリングワインや辛口白ワインを使った料理は、夏の暑さを和らげるのに最適です。エビやイカを白ワインとレモンでマリネし、冷やして提供する「シーフードと白ワインの冷製マリネ」は、爽やかな一品です。
「スパークリングワインのフルーツゼリー」は、涼しげで夏らしい演出が魅力です。冷えた料理にワインの酸味や爽快感を加えると、夏の食卓をさわやかに演出します。
秋


秋は、キノコや根菜などの濃厚な味わいの食材が旬です。赤ワインや芳醇な白ワインを活かした料理が適しています。赤ワインで煮込むビーフシチューは、赤ワインをたっぷり使い、牛肉を柔らかく煮込んだ一品です。キノコと白ワインのリゾットは、白ワインの香りとクリーミーな味わいで秋の豊かな風味を楽しめます。
深みのある味付けと香りが、秋の食材をさらに引き立てます。
冬
寒い冬には、濃厚で温かみのある料理がぴったりです。赤ワインやポートワインを使った料理は、体を温め、特別なひとときを演出します。ポートワインソースで仕上げたローストポークは、ジューシーで濃厚な味わいが楽しめる一品です。
赤ワインの香りとビターなチョコレートが調和したチョコレートムースは、冬の夜を彩るデザートとしておすすめです。濃厚でリッチな料理やデザートは、心も体も温め、冬の魅力を堪能できます。季節に合ったワイン料理を取り入れると、四季折々の味覚を楽しめます。
ワインと料理に関するよくある質問


ワインと料理に関するよくある質問は以下のとおりです。
- 料理に使うワインは飲用とは違う?
- 格安ワインを料理に使っても大丈夫?
- 料理にノンアルコールワインは使える?
料理に使うワインは飲用とは違う?
料理用ワインと飲用ワインには、異なる特徴があります。料理用ワインには、塩分や防腐剤が加えられています。長期保存が可能で、料理専用として便利です。飲用ワインも料理に使用でき、風味を豊かにするメリットがあります。長期保存を重視するなら料理用ワインを、風味を優先するなら飲用ワインを選びましょう。



飲用ワインの飲み残しは、開栓後2~3日以内なら十分料理に活用可能です。冷蔵庫で保存し、酸化が進みすぎていなければ風味もある程度保たれています。



ワインの保存期間が長く香りや酸味が弱くなっていても、加熱調理であれば問題なく使用可能です。
料理用ワインは手軽に入手でき、飲用ワインは好みの味を選べる点が魅力です。
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格安ワインを料理に使っても大丈夫?


料理に使うワインは、手頃な価格のもので十分です。使用量が少ないため、高価なワインとの品質差が風味に影響することはありません。格安ワインでも、十分に料理の味を引き立てます。高級ワインを料理に使うのはもったいないため、料理の種類や好みに合ったワインを選びましょう。
料理にノンアルコールワインは使える?
ノンアルコールワインは、料理にも使える便利な素材です。アルコールを含まないため、子どもや妊婦の方でも安心して楽しめる点がメリットです。通常のワインと同様に風味や酸味を加えられ、アルコールを避けたい場合でも料理の味を損なわずに使用できます。
ノンアルコールワインは甘みが強い点に注意が必要です。量を調整して使うと、料理全体のバランスを保てます。ソースや煮込み料理、マリネ液などで活用すれば、豊かな味わいを引き出せます。ノンアルコールワインは保存期間が通常のワインより短いため、早めに使い切りましょう。
まとめ


ワインを料理に取り入れると、食事が一層豊かで楽しくなります。赤ワインは肉料理、白ワインは魚介料理に適しており、それぞれの特徴を活かせば風味が向上します。アルコールの残留や味のバランス調整には注意が必要です。料理とワインのペアリングを工夫すると、食事をより楽しめます。
煮込みやマリネなど、ワインの風味を活かす調理法を取り入れると、おいしい料理が完成します。ワインが苦手な方や子どもがいる家庭でも、ノンアルコールワインや代替品を使えば安心です。料理用のワインは飲用と同じものでも問題なく、手頃な価格のワインでおいしい料理を作れます。
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