ナチュラルワインを選ぶときに迷う人は多くいます。ナチュラルワインは、定義や特徴が曖昧で、理解しにくいためです。この記事では、ナチュラルワインについて詳しく解説します。記事を読めば、ナチュラルワインの基礎知識や選び方、楽しみ方を理解することが可能です。
ナチュラルワインは、化学肥料や農薬を使わずに栽培されたブドウを使用し、醸造過程でも最小限の介入で作られたワインです。通常のワインとは異なる魅力があり、健康志向の人にも人気があります。

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ワインのプロが、初心者の人にもわかりやすく解説します。
ナチュラルワインとは化学肥料や化学薬品を使っていないワイン


ナチュラルワインは、化学肥料や農薬を使わずに栽培したブドウを使います。ナチュラルワインの醸造過程でも、人工的な添加物の使用は可能な限り避けます。ナチュラルワインに明確な定義や基準はありません。環境への配慮や持続可能性を重視した製法は、多くの人に支持されています。
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要するにナチュラルワインは、ブドウの栽培から醸造に至るまで、人工的な介入を極力排除したワインを指します。有機栽培(オーガニック)されたブドウを使い、醸造時も添加物(とくに亜硫酸塩)をほぼ使わないのが特徴です。



ナチュラルワインは、日本では「自然派ワイン」とも呼ばれます。
ナチュラルワインと他のワインの違い


ナチュラルワインと他のワインの違いを、以下の項目に分けて解説します。
- オーガニックワインとの違い
- ビオワインとの違い
- 酸化防止剤無添加ワインとの違い
オーガニックワインとの違い
オーガニックワインは有機栽培されたブドウを使用しますが、醸造過程での添加物の使用を許容します。ナチュラルワインは栽培から醸造までの全工程で、人工的な添加物をできる限り使用しないのが特徴です。オーガニックワインには明確な認証制度がありますが、ナチュラルワインには認証制度はありません。
オーガニックワインでは亜硫酸塩の使用が認められますが、ナチュラルワインではできるだけ避けます。ナチュラルワインは、オーガニックワインより自然で個性的な風味が特徴です。オーガニックワインの方がナチュラルワインよりも、品質は比較的安定しています。ナチュラルワインは自然酵母のみを使用します。
ビオワインとの違い


ビオワインとナチュラルワインの主な違いは、醸造過程での添加物の使用にあります。ビオワインとナチュラルワインの違いは以下のとおりです。
比較項目 | ビオワイン(オーガニックワイン) | ナチュラルワイン |
ブドウ栽培 | 有機栽培(化学肥料・農薬不使用) | 有機栽培(より厳格な自然農法) |
醸造時の添加物 | 一定量の使用を許容 | 原則不使用/最小限に抑える |
亜硫酸塩(SO2)の使用 | 一定量の使用を許容 | 原則不使用/ごく少量のみ許容 |
法的定義・認証 | 認証制度あり | 統一された法的定義・認証なし |
品質の安定性 | 比較的安定している | 生産者やボトルにより変動が大きい |
味わいの特徴 | 一般的なワインに近い味わい | 個性的で独特な風味 |



オーガニックワインもビオワインも基本的には同じですが、国による呼び方の違いがあります。
オーガニックワイン:英語圏(アメリカ・オーストラリアなど)で一般的な呼び名
ビオワイン:フランス語の「vin biologique(ヴァン・ビオロジック)」からきた言葉
酸化防止剤無添加ワインとの違い
酸化防止剤無添加ワインは亜硫酸塩を添加しませんが、他の添加物を使う場合はあります。ナチュラルワインはすべての添加物を使用しないのが特徴です。酸化防止剤無添加ワインに栽培方法の制限はありませんが、ナチュラルワインは基本的に有機栽培で、厳格な製造基準を持ちます。
酸化防止剤無添加ワインは、早めに飲む必要があります。ナチュラルワインは、酸化防止剤無添加ワインよりも保存期間が短くなる点に注意してください。ナチュラルワインの方が個性的で変化に富んだ味わいを持ち、濁りや沈殿物も多い傾向があります。
ナチュラルワインに使われるブドウの栽培方法


ナチュラルワインに使われるブドウの栽培方法は、以下のとおりです。
- ビオロジック農法
- ビオディナミ農法
ビオロジック農法
ビオロジック農法では、化学肥料や農薬を使用せず、土壌の生態系を重視します。輪作や混植で土地の力を維持したり、天敵や生物多様性を利用して病害虫対策を行ったりするのも、ビオロジック農法の特徴です。ビオロジック農法では、有機肥料や堆肥を使用し、手作業での草取りや剪定を重視します。
ビオロジック農法では、自然の雨水に頼り、水やりを必要最低限に抑えることで、ブドウの樹勢や果実の質を高めます。ビオロジック農法では収穫量よりも品質を優先するため、環境への負荷を最小限に抑えた方法でのブドウ栽培が可能です。
ビオロジック農法で育てられたブドウは、土地の個性や自然の力を反映した、味わい豊かなワインの原料となります。
ビオディナミ農法
ビオディナミ農法では、月の満ち欠けや惑星の動きにもとづいてブドウ栽培を行うのが特徴です。ビオディナミ農法はルドルフ・シュタイナーの哲学にもとづいており、有機農法よりも厳格な基準を設けています。ビオディナミ農法の特徴は以下のとおりです。
- 特殊な調合剤(プレパラート)の使用
- 土壌や植物の健康の総合的な管理
- 化学肥料や農薬の不使用
- エネルギー循環の重視
- コンポストの使用
ビオディナミ農法では、動物や植物の相互作用を活用し、霊的・精神的な側面や、天体の影響も考慮します。ビオディナミ農法で栽培されたブドウから作られるワインは、テロワールの個性を強く反映し、独特の味わいを持ちます。
ナチュラルワインの醸造方法


ナチュラルワインの醸造方法のポイントは、以下のとおりです。
- 自然酵母の使用
- 最小限の介入
自然酵母の使用
ナチュラルワインの醸造では、ブドウの果皮や畑に自然に存在する酵母を活用します。ブドウに人工的な培養酵母を使わないことで、ワインに画一的でない複雑な味わいや個性的な香りが生まれます。地域性や畑の個性がワインにより色濃く反映されるのも、ナチュラルワインの特徴です。
ナチュラルワインに自然酵母を使うと、発酵の過程がゆっくりになり、不安定になりやすい傾向があります。自然酵母は環境条件に左右されやすいため、年ごとに味わいが大きく異なるのも特徴です。
ナチュラルワインへの自然酵母の使用は、発酵の制御が難しく、失敗のリスクも高くなるため、醸造家の高い技術が求められます。
最小限の介入
ナチュラルワインの醸造では、人の手を極力加えず、ワインの自然な個性を最大限に引き出します。ナチュラルワインの醸造過程で採用されている方法は、以下のとおりです。
- 人工的な添加物を使用しない
- 野生酵母のみを使用する
- 温度管理を最小限に抑える
- 濾過や清澄化を最小限に留める
- 補糖や補酸を行わない
上記のアプローチには高い技術と細やかな管理が求められ、適切な管理を怠ると、品質にばらつきが出る可能性があります。
ナチュラルワインの味わいと特徴


ナチュラルワインの味わいと特徴を、以下の項目に分けて解説します。
- 味の傾向
- 色や香りの特徴
- よくある誤解
味の傾向
ナチュラルワインの味わいは、フルーティーで生き生きとしており、酸味が強くタンニンは穏やかです。ナチュラルワインの特徴は、ブドウの果実本来の味わいが際立ち、複雑で個性的な風味も感じられる点です。酢のような酸味や自然な甘みを感じるナチュラルワインもあります。
醸造過程によって味が大きく変化するため、ナチュラルワインは通常のワインよりも味わいにばらつきが出やすい傾向です。バランスの取れた味わいを持つナチュラルワインも多いですが、クセの強い香りや味わいがあるワインも存在します。
色や香りの特徴


ナチュラルワインには、濁りや沈殿物が見られる場合が多く、色調は濃くオレンジがかった色合いのワインもあります。ナチュラルワインは、フルーティーな香りや野性的で複雑な香り、酵母由来の独特な香りなどが特徴です。
ナチュラルワインには、揮発性の高い香りや果実の個性が強く表れる香り、土や草、花などの自然由来の香りも感じられます。ナチュラルワインならではの香りは、醸造プロセスや、使用されるブドウ本来の特性によって生まれます。ナチュラルワインの樽由来の香りは控えめで、時間とともに香りが変化しやすいのが特徴です。
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よくある誤解
ナチュラルワインには、いくつかの誤解があります。すべてのナチュラルワインが濁っているわけではなく、透明で澄んだナチュラルワインも多くあります。ナチュラルワインが必ず変な味や臭いがするといった認識も誤解です。品質の高いナチュラルワインは、通常のワインと同様においしく楽しむことが可能です。
ナチュラルワインが長期熟成に向かないといった考えも間違っており、適切に造られたワインは、長期熟成に耐えられます。ナチュラルワインは必ずしも高価ではなく、手頃な価格のワインも多く存在しています。他にも、よく聞かれる誤解は以下のとおりです。
- 酸化防止剤不使用である
- 必ず健康に良い
- すべて有機認証である
- 必ず環境に優しい
- すべて同じ味わいである
- 短期間で消費する必要がある
実際には、ナチュラルワインにもさまざまな種類や特徴があり、一概に言えない部分が多くあります。
ナチュラルワインの選び方


ナチュラルワインを選ぶ際のポイントを、以下の項目に分けて解説します。
- ラベルの見方
- 認証マークの理解
- 購入時のポイント
ラベルの見方
ナチュラルワインのラベルには、多くの情報が詰まっています。生産者名や醸造所名は、ナチュラルワインの個性や品質を知る手がかりになります。ブドウ品種は、ナチュラルワインに使用されているブドウの種類です。収穫年(ヴィンテージ)からは、ワインの熟成度合いを推測できます。
アルコール度数は、ナチュラルワインの飲みやすさの目安です。「Sans Soufre」や「No Added Sulfites」といった表記は、亜硫酸塩の無添加を意味します。「Natural Wine」や「Vin Naturel」はナチュラルワインであることを明記します。
オーガニックやビオディナミの認証マークがあれば、ナチュラルワインの栽培方法の特徴を知ることが可能です。「Unfiltered」や「Unfined」は、無濾過や無清澄化を意味します。生産地や原産地呼称は、ワインの特徴や品質を知る手がかりになります。
安心して楽しめるナチュラルワインを選ぶためには、インポーターや販売元の情報を確認して、信頼できる業者かどうか見極めましょう。
認証マークの理解


ワインボトルに付けられた認証マークは、ワインの特性や生産方法を示す指標です。ワインボトルの認証マークの意味を理解すると、自分の好みや価値観に合ったワインを選びやすくなります。認証マークの有無だけではワインの品質を判断できないため、生産者の哲学や醸造方法も考慮してください。
ヨーロッパには多くの認証機関があり、以下の独自のマークを設けています。
- オーガニック認証マーク
- ビオディナミ認証マーク
- 自然派ワイン認証マーク
1. オーガニック認証マーク(オーガニックワイン)
ユーロリーフ(Euro Leaf): EU内で生産された有機農産物に付与される公式マークで、緑色の背景に白い葉の形をしたデザインが特徴です。
AB認証(Agriculture Biologique):フランス政府が1981年に設立した有機農法の認証制度で、ユーロリーフと類似の基準を持ち、厳格な検査が毎年実施されます。
2. ビオディナミ認証マーク(ビオディナミ農法でつくられたワイン)
デメター(Demeter): 世界的に認知されたドイツのビオディナミ農法の認証マークで、オレンジ色の背景に白い「Demeter」の文字が特徴です。
ビオディヴァン(Biodyvin): フランスを中心に活動するビオディナミ農法の認証団体が発行するマークで、青色の背景に白い文字で「Biodyvin」と記載されています。
3. 自然派ワイン認証マーク(ナチュラルワイン)
ヴァン・メトード・ナチュール(Vin Méthode Nature): 2020年にフランスで導入された自然派ワインの公式認証マークで、白地に黒の文字で「Vin Méthode Nature」と記載されています。
ナチュラルワインに表示された認証マークを見る際は、信頼性と基準の厳格さも確認しましょう。ナチュラルワインに認証マークがない場合でも、生産者情報を確認してください。
購入時のポイント
ナチュラルワインを購入する際は、生産者や輸入元の信頼性を確認し、ラベルの情報を詳しく読みましょう。ナチュラルワインの購入時に、自然酵母使用や無濾過の表記、オーガニック認証や自然派ワイン協会の認証に注目してください。添加物の使用状況は、良質なナチュラルワインを買うための大事な情報源です。
ヴィンテージ(収穫年)も、高品質のナチュラルワインを選ぶための重要な要素です。ナチュラルワインは年によって味わいが大きく変わります。ナチュラルワイン専門店やソムリエのアドバイスを参考にするのも良い方法です。ナチュラルワインの試飲会や試飲イベントに参加して、味を確かめるのも有効です。
ナチュラルワインの口コミや評価も参考になりますが、最終的には自分の舌で判断することが大切になります。ナチュラルワインは一般的なワインより高価な傾向にあるので、予算に合った選択をするのがおすすめです。
ナチュラルワインの保存と楽しみ方


ナチュラルワインの保存と楽しみ方について、以下の項目に分けて解説します。
- 保存方法
- 適切な温度での提供
- 開栓後の注意点
保存方法
ナチュラルワインの保存には適切な環境が重要です。ナチュラルワインは、冷暗所での保管が基本です。ナチュラルワインを保存する際は、直射日光を避け、温度変化の少ない場所を選びましょう。ナチュラルワインを横置きで保存するとコルクが乾燥せず、ワインの品質を保つことが可能です。
コルク栓のナチュラルワインの場合は、適度な湿度も大切な要素です。開けたナチュラルワインは冷蔵庫で保存し、数日以内に飲み切りましょう。ナチュラルワインを保存する際は、振動や強い臭いを避け、ワインセラーを使用するのが望ましいです。
» ワインの保存方法やセラーがない場合の保存方法を解説!
適切な温度での提供


ワインの味わいを最大限に引き出すには、適切な温度で提供することが重要です。ワインの種類ごとの理想的な提供温度の目安は、以下のとおりです。
赤ワイン | 16~18℃ |
白ワイン | 8~10℃ |
ロゼワイン | 10~12℃ |
スパークリングワイン | 6~8℃ |
ワインの温度が低すぎると香りや味わいが損なわれ、高すぎるとアルコール感が強くなります。室温が高い場合は、ワインを少し冷やしめにしましょう。ワインクーラーやアイスバケツを活用してワインを冷やし、温度計を使用して適温を確認します。
ナチュラルワインの場合は、一般的なワインの基本的な温度設定を参考にしつつ、飲み進めながら温度変化も楽しめます。
開栓後の注意点
ナチュラルワインの酸化を防ぎ、風味を保つために、開栓後はできるだけ早く飲み切りましょう。ナチュラルワインを1度に飲み切れない場合は、真空ポンプを使用して空気を抜くと酸化を防げます。ナチュラルワインを保存する際は、以下の点に気をつけてください。
- 冷蔵庫かセラーで保存する
- 3~4日以内に消費する
- コルクで密閉する
- ボトルを立てて保存する
泡立ちのあるナチュラルワインは、専用のストッパーを使用しましょう。ナチュラルワインの開栓後は、香りや味の変化を楽しんでください。
ナチュラルワインの酸化が進みすぎた場合、飲用には適さなくなりますが、料理に活用するなど工夫次第で無駄にせず楽しめます。
まとめ


ナチュラルワインは、化学肥料や化学薬品を使わずに作られます。ナチュラルワインの魅力は、自然な味わいや個性的な香り、環境に優しい栽培方法、添加物が少ない健康的な製法にあります。
ナチュラルワインを楽しむには、正しい知識が欠かせません。ラベルや認証マークを確認し、適切な保存と温度管理を行い、魅力を最大限に引き出しましょう。インポーターや生産者の情報にも目を向ければ、自分にぴったりのナチュラルワインを見つけやすくなります。
ナチュラルワインは、個性的な風味が楽しめるのも大きな魅力の一つで、ワインの世界をより豊かに広げてくれます。