ワインが好きでも、つい同じ種類を選んでしまうことはよくあります。しかし、選ぶ種類が偏ると、ワインの多様な魅力を十分に楽しめません。この記事では、オレンジワインの基礎知識から、選び方、楽しみ方までをわかりやすく解説します。
記事を読めば、オレンジワインの魅力が明確になり、ワインの世界をもっと自由に楽しめます。オレンジワインは、白ブドウを使い、赤ワインと同じ製法で造られるワインです。オレンジワインの新しい魅力を見つけて、楽しみの幅を広げましょう。
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ワインのプロが、初心者の人にもわかりやすく解説します。
オレンジワインとは白ブドウを原料に赤ワインの製法で造られたワイン


オレンジワインの特徴は、以下の点に注目するとよくわかります。
- オレンジワインの歴史
- オレンジワインの色の由来
- 赤・白・ロゼワインとの違い
オレンジワインの歴史
オレンジワインの歴史は古く、約8,000年前のジョージア(グルジア)に起源を持ちます。古代から中世にかけて親しまれましたが、20世紀に入ると近代的なワイン製造技術の普及に伴い、一時的に生産が衰退しました。
しかし、1990年代後半にイタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州で再び注目を集め、復活を遂げます。2000年代以降、自然派ワインの流行とともに、世界的にオレンジワインの人気が再燃しました。現在では、ジョージアやイタリア、スロベニアを中心に世界中で生産されています。
オレンジワインの魅力は、以下のとおりです。
- 伝統的な製法を守りながら現代的な技術を取り入れている
- 自然派ワインとしての特徴を持っている
- 独特の風味と色合いを楽しめる
オレンジワインは古代からの伝統を受け継ぎつつ、現代のワイン愛好家に新たな魅力を提供しています。
オレンジワインの色の由来


オレンジワインの独特な色は、白ブドウの果皮や種子と一緒に発酵させることで生まれます。果皮のポリフェノールが溶け出すことで、オレンジや琥珀色の色調を帯びるのが特徴です。色の濃さは醸し期間に影響され、長いほど深みが増します。
ブドウの品種や醸造方法によっても、黄金色から濃いオレンジまで幅広い色調が生まれます。酸化の影響で色合いが変化し、時間の経過とともに深みが増すのも特徴の一つです。複数の要素が組み合わさって、独特の色調が生まれるのがオレンジワインの魅力です。見た目の美しさが、味わいへの期待感を高めます。



オレンジワインは、見た目の美しさから「アンバーワイン(琥珀色のワイン)」とも呼ばれています。
赤・白・ロゼワインとの違い
オレンジワインは、赤・白・ロゼとは異なる個性を持つユニークなワインです。白ブドウを使用し、果皮ごと発酵させる赤ワインに近い製法で造られるため、琥珀や橙色の濃い色合いになります。白ワインにはないタンニンが含まれ、しっかりとしたボディを持つのが特徴です。
香りは複雑で個性があり、酸化熟成による濃厚な風味も楽しめます。アルコール度数はやや高めで、白ワインより保存性にも優れています。ロゼと比べると味わいはより複雑で、赤ほど重くなく、白ほど軽くないバランスのよさが魅力です。
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オレンジワインに使われるブドウ品種


オレンジワインで使われる主な品種は、以下のとおりです。
- アロマティック品種
- 酸味の強い品種
アロマティック品種
アロマティック品種は、強い香りと個性的な風味が特徴で、ワインの魅力を引き立てます。ゲヴュルツトラミネールやミュスカ、リースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、トロンテスなどが代表的な品種です。ゲヴュルツトラミネールは花の香りが華やかで、ミュスカはマスカット系の甘い香りが特徴です。
リースリングには、柑橘や白い花のような華やかな香りがあります。ソーヴィニヨン・ブランは、グレープフルーツやパッションフルーツのような香りが魅力です。トロンテスも華やかな香りが際立ちます。アロマティック品種を使用したオレンジワインは、豊かな香りと複雑な味わいが楽しめます。
ただし、香りが強すぎるとバランスを損なう場合もあるため、選ぶ際は注意が必要です。



初心者は、香りの特徴がわかりやすいゲヴュルツトラミネールやミュスカから試すのがおすすめです。
酸味の強い品種
酸の強いブドウ品種によって、オレンジワインは明るく爽快な印象に仕上がります。代表的な品種は、ソーヴィニヨン・ブランやリースリング、アルバリーニョ、シャルドネ、ヴェルメンティーノなどです。レモンやグレープフルーツを思わせる柑橘系の酸味が特徴です。
特にソーヴィニヨン・ブランは、草のような香りと柑橘の風味が楽しめる点で人気があります。酸の強い品種を使ったオレンジワインは、フレッシュな印象を与えます。長期熟成にも適しており、時間の経過とともに変化する味わいを楽しみましょう。
オレンジワインの醸造方法


オレンジワイン特有の風味は、以下の醸造工程によって生まれます。
- 醸し(マセラシオン)
- クヴェヴリとアンフォラの使用
醸し(マセラシオン)
醸し(マセラシオン)は、オレンジワイン造りの中心となる工程です。白ブドウの果皮や種を果汁に漬け込むことで、独特の風味と色合いが生まれます。赤ワインの製法に似ていますが、白ブドウを使う点が異なります。期間は1週間~数か月におよび、長く続けるほど色が濃くなり、風味も複雑になる傾向です。
醸しの目的は、果皮に含まれるタンニンや色素を抽出し、ワインに複雑な香りとしっかりした構造をもたらすことです。温度管理も重要で、多くは低温で行われ、酸化を防ぐために二酸化炭素を注入する場合もあります。抽出を均一にするため、定期的に攪拌されるのが一般的です。
醸しの後に圧搾して果汁と固形物を分けることで、オレンジワイン特有の濃厚な風味と色が生まれます。
クヴェヴリとアンフォラの使用


クヴェヴリとアンフォラは、オレンジワインの醸造に用いられる伝統的な素焼きの容器です。クヴェヴリはジョージア発祥の卵型をした素焼きの容器で、アンフォラは古代ローマで使われていた壺です。どちらも土中に埋めて使用される点が特徴で、ワインに独特の風味や質感が生まれます。
素焼きの容器は微量の酸素を通すため、ワインはゆっくりと自然に熟成します。温度が安定しやすく、ミネラル感や複雑味が加わるのも魅力です。オーク樽と異なり木の香りが移らないため、ブドウ本来の味わいが際立つのが特徴です。
近年では、自然派ワインの広がりとともに、クヴェヴリやアンフォラの価値が再評価されています。クヴェヴリやアンフォラを使うことで、テロワール(土地の特性)をより鮮明に表現できるワインが生まれます。
オレンジワインの特徴


オレンジワインの特徴を以下に示します。
- 香りと味わい
- 自然派ワインとしての魅力
- フードペアリングの多様性
香りと味わい
オレンジワインは、白と赤の要素を併せ持つユニークな味わいが特徴です。フルーティーで複雑な香りが広がり、白ワインよりも濃厚な果実味を感じられます。オレンジワインの香りと味わいは、オレンジピールやドライフルーツの風味、ナッツやハーブの香りが特徴です。赤ワインに近い骨格と構造も持ち合わせています。
酸味が高く、タンニンの存在感やミネラル感も際立ちます。酸化熟成による独特の風味と、口に含んだ後の長い余韻も魅力です。
自然派ワインとしての魅力


余計なものを加えない造りと際立った個性が、オレンジワインの魅力です。化学添加物や人工酵母を使わず、最小限の亜硫酸塩で造られるため、自然な味わいが楽しめます。野生酵母による自然発酵は、土地の風味を引き出し、複雑で奥行きのある味わいを生み出します。
使用されるブドウは、オーガニックやビオディナミ農法による栽培です。環境に配慮した持続可能な生産方法で作られているため、健康志向の消費者からも高い支持を得ています。手作業の仕込みと自然なフィルタリングにより、ワイン本来の風味と個性が引き立ちます。
フードペアリングの多様性
フードペアリングの幅広さは、オレンジワインの大きな魅力の一つです。タンニンと酸味のバランスが取れているため、軽い料理から濃厚な料理まで合わせやすく、1本で食事全体を楽しめます。オレンジワインと相性の良い料理を以下に紹介します。
- 白身魚や鶏肉などの軽めの料理
- 赤身肉を使ったしっかりした料理
- チーズや野菜を使った温かい料理
- スパイスを効かせた料理
- 野菜中心のベジタリアンメニュー
フルーツタルトやチーズケーキなどのデザートとも好相性で、季節を問わずさまざまなシーンで楽しめるのも魅力です。
オレンジワインの選び方


オレンジワインを選ぶ際の視点について、以下に整理します。
- 味わいで選ぶ
- 品種で選ぶ
- 産地で選ぶ
味わいで選ぶ
オレンジワインは、白ワインと赤ワインの特徴を併せ持つユニークな味わいが魅力です。一般的に、フルーティーな香りと適度な渋みのバランスが特徴です。味わいを選ぶ際には、いくつかのポイントがあります。軽やかさを求めるなら、醸し期間が短いタイプがおすすめです。フレッシュで軽快な口当たりが楽しめます。
華やかな香りや豊かな果実味を楽しみたい場合は、アロマティック品種を使ったものが適しています。渋みをしっかり感じたいなら、醸し期間の長いタイプがおすすめです。さわやかな酸味を求めるなら、冷涼な地域で造られたものを選びましょう。ボディの重さも軽めから重めまで幅広く、自分の好みに合わせて選べます。



初めてオレンジワインを試すなら、軽やかでフルーティーなタイプから始めるのが安心です。



慣れてきたら、より複雑な味わいのものに挑戦しましょう。
品種で選ぶ


香りや味わいの好みに合わせて楽しむうえで、オレンジワインの品種選びは重要なポイントです。オレンジワインの代表的な品種と特徴を以下にまとめました。
品種 | 特徴 |
フリウリアーノ | 芳醇な香りと複雑な味わい |
リボッラ・ジャッラ | 柑橘系の香りとキレのある酸味 |
ゲヴュルツトラミネール | スパイシーで華やかな香り |
ピノ・グリージョ | 軽やかな果実味とすっきりした酸味 |
シャルドネ | バターやナッツを思わせる風味とまろやかな口当たり |
ソーヴィニヨン・ブラン | グレープフルーツやハーブの香り、爽やかな酸味 |
リースリング | 花や果実の香りと引き締まった酸味 |
ヴィオニエ | アプリコットやモモの香りと滑らかな口当たり |
グルナッシュ・ブラン | 白い花や洋ナシの香り、ミネラル感 |
マルヴァジア | アロマティックな香りと濃厚な味わい |
品種の特徴を知ることで、自分の好みに合ったオレンジワインを選びやすくなります。初めて試すなら、軽やかなピノ・グリージョや爽やかなソーヴィニヨン・ブランがおすすめです。慣れてきたら、複雑なフリウリアーノや華やかなゲヴュルツトラミネールに挑戦しましょう。
産地で選ぶ
オレンジワインは世界各地で造られています。代表的な産地は、イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州やシチリア州です。ジョージアのカヘティ地方やフランスのジュラ地方、ロワール地方も、長い伝統に根ざした醸造が続けられています。
フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州ではリボッラ・ジャッラ種を使った濃厚なオレンジワインが有名です。ジョージアのカヘティ地方では、素焼きの壺(クヴェヴリ)を使った伝統的な発酵・熟成法が受け継がれています。フランスのジュラ地方では、サヴァニャン種による個性的な味わいが特徴です。
近年ではオーストリアやスペイン、ギリシャ、アメリカ、オーストラリアなどの国々でも生産が広がっています。日本でも山梨県や長野県などで造られています。産地ごとに使用する品種や製法が異なるため、多彩な個性を楽しめるのが魅力です。産地にも注目すると、オレンジワインの世界がさらに広がります。
オレンジワインの楽しみ方


オレンジワインをより深く楽しむための要素を、以下に示します。
- 飲み頃の温度
- 保存方法
- オレンジワインに合う料理
飲み頃の温度
オレンジワインは、一般的に10〜14℃が飲み頃です。赤ワインより低く、白ワインよりやや高めの温度帯です。冷蔵庫から出して15〜20分ほど常温に置くと、温度が上がるにつれて香りが開き、より豊かな風味が楽しめます。夏は少し冷やしめに、冬はやや温かめにするなど、季節に合わせて温度を調整するのも効果的です。
グラスの温度にも気を配ると、香りの印象がより際立ちます。温度によって香りや味わいが変化するため、少しずつ温度を上げながら飲み比べてみるのもおすすめです。自分にとってベストな飲み頃を見つければ、オレンジワインの奥深さを楽しめます。
保存方法


ワインの品質と味わいを長く楽しむには、適切な保存が欠かせません。最適な状態を保つためのポイントを以下に紹介します。
- 冷暗所で保管する
- ボトルは横に寝かせる
- 振動を避ける
- 開封後は冷蔵庫で保存する
- 1週間以内に飲み切る
- 真空ポンプを使う
- ワインセラーを活用する
上記の保存方法を心がけることで、ワインを最良の状態で楽しめます。
» ワインの賞味期限は?飲み頃から賞味期限を伸ばすコツまで紹介
オレンジワインに合う料理
オレンジワインは料理との相性が幅広く、組み合わせの工夫がしやすいのが魅力です。特にチーズ料理やスパイスを効かせた料理、魚介類、鶏肉・豚肉を使った料理とはよく合います。複雑な風味とほど良い酸味が、それぞれの料理の味わいを引き立てます。
中でも、熟成チーズの濃厚さとオレンジワインのタンニンが引き立て合う組み合わせは、魅力的です。グリルした野菜やキノコを使った料理、リゾットやパスタなどとも相性がよく、ワインの香りと味わいが際立ちます。中東料理やナッツを使った料理とも好相性で、タブレやフムスの風味をオレンジワインがやさしく引き立てます。
デザートでは、柑橘類や洋ナシを使ったフルーツデザートがおすすめです。ワインの果実味と自然な甘みが調和し、心地良い余韻が残ります。
まとめ


オレンジワインは、独特な製法と深い歴史に根ざした複雑な香りと味わいが特徴です。アロマティックな品種や酸味の強い品種を使用し、伝統的な醸造法で作られるため、自然派ワインとしても注目されています。オレンジワインは、味わいや品種、産地に多様性があり、好みに合わせた一本を選びやすい点が魅力です。
フードペアリングの幅が広いので、食事の幅も広がります。温度や保存方法に気をつけることで、オレンジワインの魅力を最大限に引き出せます。ワイン愛好家や新しい味わいに挑戦したい人にもおすすめです。